あるArとPmの会話(僕ガス500DL記念 3位キャラの描きおろし新規エピ)
稀気市にあるゲームセンターランタン。
普段は、ランタノイドが集まっていることで有名なそこだが、今日は一人の少年の姿しかない。
彼は足でボタンを押す音楽ゲームで遊んでいた。
アップテンポな曲に合わせてたくさんのノーツが降ってくる。かなりの高難易度に見える。
それを軽々とこなしていると、ゲームセンターのドアが開く。
少年は特に気にもとめることはなく、黙々と譜面を踏む。
音楽が止まり、ゲームクリアの画面に切り替わる。
汗を拭うために振り向くと、そこには毛先にかけて紫色のグラデーションのかかった青髪の男性が立っていた。
「……アルゴンさんですか」
少年が次の曲の選択をしながら呟く。
「プロメチウムだな。久しぶりなことで」
アルゴンはプロメチウムのやってるゲームの後ろにある椅子に腰掛ける。
プロメチウムは、ゲームの筐体の後ろにあるバーを掴んで次のゲームの始まりを待つ。
「アルゴンさんがここにくるのは珍しいじゃないですか。何かランタノイドに用でも?」
音楽が流れ出す。プロメチウムはまた足を動かし始めた。
「お前に用があったんだよ」
プロメチウムが肩を一瞬震わせる。その拍子で、続いていたコンボが切れる。
「木陰さんが亡くなった」
アルゴンは淡々と事実を言う。木陰とは、確かヘリウムが今名乗っている名のはずだ。
「へぇ」
プロメチウムは少し動揺するも、画面から目を逸らさない。
「お前だよな、木陰さんの彼女を奪ったのは」
アルゴンの視線が刺さる。
「そうだよ、彼女にちょっとアプローチかけたら、簡単に攻略できた。でもそれがなんだ?」
「お前は、なんでもゲーム感覚なのか?」
アルゴンの声で集中が途切れる。なんとか譜面に集中しようとする。
「残念だが、彼女……茉莉奈さんも死んだ」
すでに減っていたゲージが一気になくなり、画面のシャッターが落ちる。
ただ虚しく、そこにはゲームオーバーの文字が映し出されていた。
「……は?」
意味がわからないと言うように、プロメチウムがアルゴンの方を見る。
「木陰さんが、殺したんだ」
アルゴンは椅子からたちあがり、プロメチウムの元に歩いてくる。
「この街にある『元素のための条約』、暗唱できるよな」
プロメチウムはもちろんと言って指で数えだす。
「一、元素を脅して元素を出させてはいけない。二、元素は無闇矢鱈にその元素で人に危害を加えてはいけない。三、元素と人の共存のために、互いに協力すること」
プロメチウムが一息で言い切る。
「それがどうかしたんですか?」
アルゴンは何も理解していないプロメチウムの胸ぐらを掴む。
「木陰さんはそれを犯した。お前のせいだ」
さっきまでの冷静な声ではなくなっている、
「はぁ……ってことは、その場で裁かれたんでしょう?木陰さん」
この街にある、元素専門の警備隊が出動したとでも言いたげだ。
「いや、到着前に木陰さんは自分で命を絶ったよ」
アルゴンはそう言って、掴んでいた手を離す。
「とりあえず、これだけ渡しておくからな。次にヘリウムと会った時にでも、渡しておけ」
そう言って、アルゴンが一つの小箱をプロメチウムに手渡す。
「木陰さんは、平気そうなふりをしても、かなり引きずってそうなんで」
そう言って、アルゴンは背を向けてゲームセンターから出ていく。
その場に残されたプロメチウムは、小箱を開けた。
中には、ダイヤモンドが埋まったプラチナ製の指輪が入っていた。
……そこから二十年近く未来の話。
飯矢は、二胡とともに稀気温泉街を訪れていた。
「珍しいですね、二胡さんから温泉誘ってくれるなんて。もちろん奢りですよね?」
「あはは、ちゃっかりしてるなぁ飯矢は。もちろん、奢りだよ」
二胡の方から温泉に行きたいと誘われたのも意外だった。飯矢がこの体に生まれ変わってから、二胡と温泉は行ったことがなかったからだ。
脱衣所で服を脱ぐ二人。そこで、二胡の服の下に隠されていたネックレスが飯矢の目に入る。
「二胡さん、それって……」
二胡の胸に輝くネックレスの先端には、ダイヤモンドの嵌った指輪がぶら下がっていた。